共有不動産の賃料収入をめぐる問題について
はじめに
共有不動産の所有者同士の間で、賃料収入をめぐるトラブルが発生することは少なくありません。特に、共有者の一人が賃料を独占している場合や、賃貸契約に関与していない共有者が賃料を受け取れないといった問題は、複雑な法律的な解釈を伴うため、対処に困るケースが多く見受けられます。
この記事では、こうした共有不動産の賃料収入をめぐる問題について、具体的な対応策や法的根拠を解説します。
共有不動産の賃料収入は誰のものか?
共有不動産とは、複数の人が共同で所有権を持っている不動産のことを指します。この不動産を第三者に賃貸する場合、その賃料収入は誰に帰属するのでしょうか?
賃料収入の帰属について
共有不動産の賃料収入は、原則として、その不動産の共有持分権者全員に帰属します。これは、賃料収入が「法定果実」として不動産の所有者に属するものだからです。したがって、共有者の一人が他の共有者に無断で賃貸借契約を締結し、その賃料を独占していた場合でも、他の共有者は自分の持分に応じた賃料を請求する権利を有しています。
賃貸契約書を作成していない場合でも賃料請求は可能か?
賃貸借契約書に自分の名前が記載されていない場合、賃料請求ができるのか疑問に思われることがあります。しかし、賃料収入を得る権利は、賃貸借契約の当事者であるかどうかではなく、あくまでも不動産の所有者としての権利に基づくものです。そのため、賃貸借契約書に名前がない場合でも、持分権者である限り、賃料請求を行うことができます。
共有不動産の賃料を独占された場合の対応策
共有者の一人が賃料を独占している場合、どのような対応をすればよいのでしょうか?以下では、具体的な対応策について説明します。
1.不当利得返還請求を行う
賃料を独占している共有者に対しては、不当利得返還請求を行うことができます。不当利得とは、正当な権利を持たないにもかかわらず他人の財産を得ることを指し、この場合、他の共有者の賃料相当額を返還するよう請求できます(民法第703条)。
2.共有物分割請求を行う
共有物分割請求とは、共有状態を解消するための手続きです。賃料収入の分配で合意できない場合には、最終的に共有物分割請求を行い、不動産そのものを売却してその売却代金を持分に応じて分配することも検討できます。
賃料の額を知るための手続き
自分が賃貸借契約に関与していない場合、賃料の金額がわからないことがあります。このような場合には、以下の手続きを検討しましょう。
1.賃貸借契約書の開示を求める
相手方に賃貸借契約書の開示を求め、その金額に基づいて賃料を分配するよう要求できます。これにより、正確な賃料収入の把握が可能です。
2.文書提出命令の申立て
相手方が賃貸借契約書の開示を拒む場合には、共有物分割訴訟の手続き内で文書提出命令を申立てることができます。文書提出命令により、相手方に契約書を提出させることができるため、賃料額を確認する手段として有効です。
3.主張する賃料額を用いる
それでも相手が契約書を提出しない場合には、こちらが主張する賃料額を基に計算してもらえることもあります。訴訟においては、相手方が提出義務を怠るとこちらの主張が採用される可能性もあります。
弁護士に相談するメリット
共有不動産の賃料収入をめぐる問題は、法的手続きや証拠収集、交渉力が求められるため、専門的な知識を持つ弁護士に相談することが望ましいです。弁護士に相談することによる具体的なメリットは以下のとおりです。
1.適切な法的アドバイスを受けられる
法的根拠に基づくアドバイスを得ることで、権利を最大限に守ることができます。
2.交渉力が強化される
弁護士が交渉の窓口となることで、相手方との交渉を有利に進めることができます。
3.訴訟手続きのサポートを受けられる
訴訟手続きの進行や証拠収集を弁護士が代行するため、依頼者の負担を大幅に軽減できます。
4.迅速な問題解決が可能
弁護士の知識と経験を活用することで、問題解決をスピーディに進めることが可能です。
まとめ
共有不動産の賃料収入を共有者の一人が独占している場合、他の共有者は適切な法的手続きによって、自分の持分に応じた賃料を請求することができます。不当利得返還請求や賃料の支払い請求、共有物分割請求など、状況に応じた対応策を講じましょう。
しかし、共有不動産の問題は複雑であり、法的知識や手続きが求められるため、弁護士への相談もご検討ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、共有不動産をめぐるトラブルに関する相談を受け付けております。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。