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不動産売却時に必要な書類と手続きのポイント

はじめに

不動産を売却する際、重要なのは「スムーズな手続き」と「必要書類の準備」です。書類が不足していたり、手続きの流れを誤解していたりすると、買主への引渡しが遅れてしまうだけでなく、売買契約自体が破談になってしまう可能性もあります。

また、不動産売却は通常の売買に比べて金額が大きく、ローンの残債処理や名義変更など、煩雑な作業が必要とされる場合が多々あります。そこで今回は、不動産の売却時にどのような書類を準備すればよいのか、実際の手続きを順を追って解説します。
これから物件を売却しようと考えている方は、ぜひ押さえておきたい知識ですので、最後までご覧ください。

Q&A

不動産の売却でまず用意すべき書類は何ですか?

一般的には以下のような書類が必要となります。

  • 登記済証(権利証)または登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書
  • 身分証明書・実印・印鑑証明書
  • 住民票(売主の住所移転があった場合)
  • 建築確認済証や検査済証(建物がある場合)
  • 間取り図、管理規約・使用細則など(マンションの場合)

その他、売却する不動産の種別や売主の状況によって追加書類が必要になることがあります。

権利証や登記識別情報を紛失してしまった場合、どうすればいいでしょうか?

紛失した場合でも売却手続きが不可能ではありませんが、「本人確認情報」を作成したり、別途手続きを踏んだりするため費用や時間が追加でかかることがあります。司法書士や弁護士に相談して、早めに対応しましょう。

ローンが残っている不動産を売却するときは、何か追加で必要な手続きがありますか?

不動産に設定された抵当権の抹消が必要となります。売却代金でローンを完済する場合、金融機関と相談して抵当権を抹消する手続きを決済日に行うのが一般的です。金融機関から発行される「抵当権抹消書類」も必要となりますので、事前に金融機関と打ち合わせておきましょう。

マンションを売る場合、管理組合関連の書類はどのようなものが必要ですか?

マンション売却の場合、以下の書類が求められることがあります。

  • 管理規約・使用細則
  • 管理費・修繕積立金の支払い状況がわかる書類
  • 長期修繕計画書(あれば)
  • 管理組合総会議事録(直近数年分)

買主はマンションの維持管理や修繕状況を確認した上で購入を検討するため、管理組合関連書類が重要な判断材料となります。

不動産を相続して名義変更していない場合、売却はできますか?

原則として名義変更(相続登記)を済ませてから売却を行います。相続登記が完了していない場合、売却手続きがスムーズに進まず、買主も安心して購入できません。相続人が複数いるケースでは、遺産分割協議書の作成が必要になるなど、事前に解決すべき課題が多くあります。

解説

専門用語の定義

登記済証(権利証)・登記識別情報

不動産の所有者が誰であるかを示す重要書類。2005年(不動産登記法改正)以前に取得した場合は紙の権利証(登記済証)、以降は登記識別情報が交付されます。なくすと再発行できないため、厳重な保管が必要です。

印鑑証明書・実印

公的機関に登録した印鑑(実印)であることを証明するもの。不動産の売却では実印が必要となるケースがほとんどです。印鑑証明書は発行後3ヶ月以内など有効期限がある場合が多いので、タイミングを計って取得しましょう。

抵当権抹消

ローン返済中の不動産には金融機関の抵当権が設定されています。売却時にローンを完済して抵当権を抹消しないと、買主に所有権を移転できない仕組みです。抹消手続きには金融機関から渡される必要書類と、司法書士が作成する書類を登記所へ提出します。

基本的な流れ・手続き

  1. 事前準備・仲介業者への依頼
    まずは仲介業者に相談し、物件査定や売却プランを策定します。その際、登記情報や固定資産税納税通知書などを確認し、物件の正確な情報を伝えましょう。
  2. 売買契約の締結
    買主が見つかり、価格や条件に合意したら売買契約を結びます。契約時には印紙が必要となるので忘れずに準備しておきましょう。手付金の受領もこの段階で行われます。
  3. 決済・引渡し準備
    決済日までに売主は必要書類をそろえ、抵当権がある場合は金融機関と連絡を取りローン残高の確認・抹消手続きの段取りを整えます。マンションの場合は管理組合関連の書類も揃えておきます。
  4. 残代金の受領・所有権移転登記
    決済日に買主が残代金を支払い、同時に司法書士が所有権移転登記を申請します。売主は登記済証や登記識別情報、印鑑証明書など必要書類を渡します。
  5. 引渡し
    売主から鍵や備品の引渡しが行われ、物件の占有が買主に移転します。管理費や固定資産税などは日割り清算される場合が多いです。

実務上の注意点

書類の早期確認

売却を思い立った段階で、手元にどのような書類があるか確認し、足りないものや期限切れの可能性があるものを把握しましょう。役所での書類取得や金融機関との連絡が必要になるケースもあるため、余裕をもって対応することが大切です。

相続登記の対応

相続物件を売却する場合、相続人全員の合意が取れていないとトラブルの原因になります。売却話を進める前に相続登記や遺産分割協議を済ませるのが理想です。

マンションの場合は管理状況の確認

管理費や修繕積立金の滞納があると、買主が購入を敬遠する可能性が高まります。また、長期修繕計画や大規模修繕の履歴など、管理組合の運営状態は買主にとって重要な判断材料となります。

ローン完済のタイミング

ローンが残っている場合、売却代金で一括返済するパターンが多いですが、抹消手続きをスムーズに行うには金融機関との調整が必要です。決済日当日に抵当権抹消書類を用意してもらえるよう、事前に連絡しておきましょう。

弁護士に相談するメリット

相続・共有不動産の売却サポート

相続登記が未了のまま売却を進めようとしたり、共有名義で意見がまとまらないケースでは、法的手続きのサポートや調整が必要です。弁護士が早期に関与することで、複雑な事情があってもスムーズに売却を進めやすくなります。

トラブル発生時の交渉・対応

決済直前に書類紛失が発覚したり、契約時に取り決めた条件が反故にされそうになった場合など、想定外のトラブルにも法的に適切な解決を図ることができます。

契約書チェック

売買契約書に記載するべき重要事項や、売主として留意すべき条項について、弁護士がリーガルチェックを行うことで、後々の紛争リスクを抑えられます。

弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート

当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)では、相続不動産の売却手続きや、抵当権抹消を含む複雑な不動産売買に関するご相談も受け付けています。書類の不備でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

不動産の売却時には、必要書類の把握と手続きの流れをしっかり理解しておくことがスムーズな取引の鍵となります。

  • 権利証や登記識別情報、印鑑証明書など重要書類の管理
    紛失・不備があると、決済日延長や追加費用が発生するリスクがあります。
  • 相続登記や遺産分割協議を先に済ませる
    相続物件の場合、名義が曖昧な状態では売却が進められません。
  • マンションの場合、管理組合関連書類も重要
    管理規約や修繕計画書などは買主にとって購入決定の大きな材料となります。
  • 抵当権抹消の準備を忘れずに
    ローン残債がある場合は、金融機関と連絡し決済日に抹消手続きを行えるよう段取りを整えましょう。

必要書類の確認を怠ると、買主が見つかっても契約締結や引渡しまでスムーズにいかない可能性があります。お早めの準備と専門家への相談が、安心・確実な不動産売却を実現するポイントです。

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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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