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新築・中古物件購入時の注意点

はじめに

不動産購入を検討する際、「新築物件を買うか、中古物件を買うか」で悩む方は多いでしょう。新築には最新設備やアフターサービスといったメリットがありますが、価格が高めになる傾向があるほか、施工不良や引渡しの遅延といったリスクもあります。一方で中古物件は価格が比較的安価で選択肢が広い一方、建物の老朽化や設備トラブル、リフォーム費用などの懸念が挙げられます。

そこで本稿では、新築・中古それぞれの特徴や、購入時に特に注意すべきポイントをまとめました。物件選びで後悔しないためには、表面だけではなく法的・実務的観点からもリスクと対策を知っておくことが大切です。

Q&A

新築物件を購入する際、建物が完成していない段階で契約することもあると聞きますが、リスクはありますか?

いわゆる「建築中の新築」を予約契約や売買契約する場合、完成が遅れるリスクや、実際に完成した建物がイメージと異なるリスクがあります。また、施工不良などが後から判明する可能性も否定できません。契約書や重要事項説明で、完成時期や瑕疵(契約不適合)対応などがどう定められているかをしっかり確認しましょう。

中古物件を購入するとき、どのような点検や調査を行うべきですか?

代表的なものとしては「建物状況調査(インスペクション)」があります。専門の建築士などが建物の劣化や構造上の問題をチェックするもので、購入前に実施しておくと、雨漏りやシロアリ被害、設備不良などを発見しやすくなります。また修繕履歴が残っているか、リフォーム履歴や保証の有無なども確認が必要です。

新築と中古のローン審査に違いはありますか?

一般的には新築物件のほうが評価が高く、ローン審査が通りやすい傾向があります。中古の場合、築年数によって融資期間が短くなる、あるいは金利が高くなる場合もあります。ただし、金融機関や物件の地域・条件などによって異なるので、事前に複数のローン商品を比較検討することが大切です。

中古物件で瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免責されることがあると聞きますが、どういうことですか?

個人間売買などでは、売主が「現状有姿渡し」とし、契約不適合責任を負わない(免責する)特約を付ける場合があります。こうした特約があると、雨漏りなどの問題が後から発覚しても売主に責任を追及できない可能性があります。ただし、売主が悪意で重大な欠陥を隠していたような場合、特約がすべて有効になるとは限りません。

新築・中古を問わず、押さえておくべき共通の注意点は何ですか?

まずは 契約書と重要事項説明書をしっかり確認する ことが何より重要です。特に、引渡し時期・手付金や違約金の取り扱い・契約不適合責任の範囲と期間・住宅ローン特約 など、後々トラブルになりやすい項目を入念にチェックしましょう。疑問点があれば事前に専門家へ相談するのが得策です。

解説

専門用語の定義

  1. 建物状況調査(インスペクション)
    建築士などの専門家が、建物の基礎・外壁・屋根・室内などを目視や計測で確認し、劣化や不具合の有無を報告する調査。中古物件の購入前に行うことで、買主がリスクを把握しやすくなります。
  2. 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)
    引渡しを受けた不動産が契約の内容と異なる不具合(不適合)を抱えていた場合、売主が一定の責任を負う制度。特約で制限・免責される場合もありますが、売主が悪意・重過失だった場合は特約が無効となるケースもあります。
  3. 現状有姿渡し
    中古物件でよく用いられる特約で、「現在の状態のままで引渡しを行う」という意味。契約書にこの文言があると、引渡し後に設備故障や不具合が見つかっても売主側の修補責任が問えない場合があります。

新築物件購入時の注意点

  1. 物件の完成時期と引渡し時期の確認
    建築中の物件を購入する場合、工期の遅れなどで引渡しが予定より遅れる可能性があります。契約書に遅延対策や違約金の規定があるかチェックしましょう。
  2. 施工不良・アフターサービスの確認
    新築なら必ずしも欠陥がないわけではありません。引渡し後に隠れた欠陥が見つかることもあるため、どのような保証制度やアフターサービスがあるのかを把握しておくことが大切です。いわゆる「住宅瑕疵担保責任保険」に加入しているかどうかもポイントになります。
  3. モデルルームとのギャップ
    分譲マンションの場合、モデルルームの設備やオプションが標準仕様とは異なるケースがあります。内装材やオプション費用をしっかり確認し、追加費用が発生しないか事前に検討しましょう。

中古物件購入時の注意点

  1. 建物の状態・リフォーム費用の見積もり
    中古物件の魅力は価格の安さや、立地の良いエリアで比較的求めやすい点にありますが、建物のコンディションを誤ると大きな出費につながります。事前にインスペクションを依頼したり、想定されるリフォーム費用を試算しておきましょう。
  2. 瑕疵担保(契約不適合)責任の特約
    売主が宅建業者の場合は一定の責任期間が法律で定められていますが、個人間売買では「契約不適合責任を負わない」旨の特約が付くこともあります。契約不適合が見つかった場合のリスクを理解しておきましょう。
  3. 管理状況や周辺環境のチェック
    特に中古マンションの場合、管理組合の運営実態や修繕積立金の残高、長期修繕計画の有無が重要です。また、近隣住民との関係や騒音、匂いなどの生活環境も事前にできる限り確認しておくと安心です。

実務上の注意点

  1. 重要事項説明書の内容確認
    新築・中古問わず、物件の法的規制(建築基準法や都市計画法など)、ライフライン設備、敷地の境界、道路との関係などをしっかり理解しましょう。
  2. 住宅ローンのシミュレーション
    新築のほうが融資条件が良い場合もありますが、必ずしも一括りにはできません。中古物件でも価格が安く、自己資金を多めに投入できるなら金利の負担を抑えられるケースもあります。複数の金融機関を比較検討しましょう。
  3. 引渡し後のトラブルに備える
    契約時点で不具合がなかったとしても、住み始めてから気づく問題は少なくありません。契約不適合責任(保証期間)や保険の有無、仲介業者や売主への問い合わせ方法などを事前に確認しておきましょう。

弁護士に相談するメリット

  1. 契約書・重要事項説明書のリーガルチェック
    新築・中古それぞれで気を付けるポイントが異なりますが、弁護士がチェックすることで不利益な特約や不明瞭な条項を発見し、修正を求めることが可能です。
  2. トラブル発生時の迅速対応
    施工不良や契約不適合、ローン問題など、購入後に紛争に発展するケースは少なくありません。弁護士が早期に介入することで、修補や損害賠償などの手続きを円滑に進められます。
  3. 不動産会社や施工会社との交渉サポート
    売主が大手デベロッパーや不動産会社の場合、個人では対等な交渉が難しい場合もあります。弁護士を通じて交渉すれば、法的根拠に基づいて冷静に話し合いを進めることができます。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポート
    当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)では、新築・中古どちらの購入にも対応可能な幅広い実務経験を有しています。購入前の契約書チェックやトラブル対応、さらにはローン関連の相談などもご依頼いただけます。

まとめ

新築・中古物件それぞれにメリットデメリットがあります。

  • 新築
    最新の設備・保証が期待できる反面、工期遅延や施工不良リスクがあり、価格が高めになりやすい
  • 中古
    物件価格が安めで選択肢が豊富だが、建物の老朽化やメンテナンス費用、契約不適合責任の免責特約など、トラブル要素が増える可能性もある

共通して大事なのは、契約書・重要事項説明書の内容把握、物件の状態確認、住宅ローンの適切な選択です。トラブルを回避し、安心して新居を手に入れるためにも、必要に応じて弁護士や不動産の専門家にサポートを仰ぐこともご検討ください。

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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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