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登記名義人の更正登記の実務

はじめに

不動産登記には、売買や相続、贈与などさまざまな原因で所有権移転や権利設定が行われますが、ときには登記情報の誤り(ミス)が生じることがあります。例えば、名前の漢字が違っていたり、住所や地番の誤り、日付の間違いなど、手続き上のエラーが見つかるケースです。

これらの誤記を修正するための手続きが「更正登記(登記名義人の更正登記)」です。正しい登記でなければ、後々の取引や相続で大きな問題を引き起こす可能性があります。本稿では、更正登記の基本的な流れや注意点を解説します。

Q&A

Q1.更正登記とは何ですか?

更正登記とは、登記記録に誤った記載や誤字脱字がある場合に、それを正しく訂正する登記手続きのことです。氏名や地番、住所、登記原因日付など、登記情報として重要な箇所にミスがあれば、法務局への申請を通じて修正します。

Q2.更正登記はどういうケースで必要になるのでしょうか?

代表的には以下のようなケースが挙げられます。

  • 登記原因日付の間違い(売買契約日を誤記)
  • 名義人の氏名表記に誤り(旧姓、漢字ミスなど)
  • 住所の番地やマンション部屋番号の記載ミス
  • 地番や家屋番号の記入間違い
Q3.更正登記にはどんな書類が必要ですか?

一般的には以下のような書類が求められます。

  • 更正登記申請書
  • 誤記やミスがあることを証明する資料(例えば、契約書や公的書類)
  • 登記識別情報(または登記済証)
  • 印鑑証明書・本人確認書類(名義人の誤りを証明する場合)
  • 委任状(代理人が申請する場合)

誤りの内容によって添付書類は異なるため、必要性を法務局や専門家に確認します。

Q4.なぜ更正登記が重要なのですか?

登記情報が間違ったままだと、売買・相続・担保設定など後々の取引で混乱が生じます。名義人の名前や住所が違えば本人確認ができず、契約や融資が滞る恐れも。したがって、誤りを発見したら早急に更正登記を行うのが重要です。

Q5.更正登記を怠るとどうなりますか?

法的には、登記情報と実態が合致していない状態が続くため、トラブルリスクが高まります。例えば、名義人が亡くなった後に誤記を見つけると、相続人は遡って手続きしなければならず、非常に手間と時間がかかります。また、誤記が原因で売買契約が破談になるなど損害を被る可能性もあります。

解説

更正登記の手続きの流れ

1. 誤記の発見

登記簿をチェックしていて、氏名・住所・登記原因日付などが実際と違うことに気づく。契約書や公的書類と照合してミスであることを確かめる。

2. 必要書類の準備
  • 更正登記申請書
  • 登記原因を証明する契約書・戸籍謄本・住民票など(誤りの箇所を補足する資料)
  • 登記識別情報(または権利証)
  • 印鑑証明書など
3. 法務局への申請

登記簿のある管轄法務局に書類を提出。オンライン申請も可能だが、添付書類をどう扱うか、法務局に事前確認が必要な場合もある。

4. 審査・更正

法務局が審査し、正当な理由であると認めれば登記情報を修正し、更正登記が完了。完了通知が届き、登記簿謄本に正しい情報が反映される。

よくある更正登記の事例

1. 氏名の漢字違い

「高橋」が「高橋」と書かれているべきところを誤って「高橋」になっている、旧字体と新字体の混同など。法務局に提出した住民票や戸籍謄本で本来の氏名を示すことで更正手続きを行う。

2. 日付の誤記

売買契約日を1日違いで誤記したり、相続開始日(被相続人の死亡日)を勘違いして入力した場合など。契約書や死亡診断書の写しなどで正しい日付を証明し、訂正する。

3. 住所変更が反映されていない

住所を移転したのに登記上の住所を更新しておらず、別人と認識されるケース。住所変更登記や更正登記で対応するが、複数回の引越しがあると手続きが複雑になる。

実務上のポイント

1. 書類証拠の整備

更正登記は「登記簿が間違っている」ことを証明するため、契約書や身分証明書、戸籍など、公的に真正性が認められる資料が必要。書類不備だと補正や再申請を求められる。

2. 共有者がいる場合

共有不動産の場合、誤記が所有者全員に関わる内容なら、共有者の同意や署名が必要になることもある。特に登記原因の修正が絡む場合は慎重に進める。

3. 死亡後に発覚した誤記

名義人が亡くなった後に誤記を発見した場合、相続人が名義人の正しい情報を示すための資料がさらに増える。相続登記と同時に行うか、先に更正登記を行うかなど、専門家に相談して最適な順序を判断する。

弁護士に相談するメリット

  1. 権利関係や手続き上の混乱を防止
    更正登記を行う際、当事者の意見の相違や他の権利者(抵当権者など)との調整が必要な場合、弁護士が交渉や説明を担当することでスムーズな解決が期待できます。
  2. 書類の不足や補正
    法務局から補正指示が出ても、法的根拠に基づいて適切な書類を追加・修正できるため、最短で更正登記を完了できる可能性が高まります。
  3. 相続・離婚など別の紛争との関連
    更正登記の背景に相続争いや離婚による財産分与がある場合、弁護士が総合的に問題を整理し、調停や訴訟など必要手続きも含めてサポートできます。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の強み
    当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、不動産取引・相続・企業法務で多様な案件を手掛けています。司法書士や土地家屋調査士と連携しながら、適切な解決をサポートいたします。

まとめ

  • 更正登記は、登記記録に誤記・記載ミスがあるときに正しく修正する手続きで、登記の実態と合致させるために重要。
  • 氏名・住所・登記原因日付・地番など、誤りが起きやすい項目に注意。
  • 必要書類:更正登記申請書、誤りを証明する公的書類、登記識別情報、印鑑証明書など。
  • 法務局が審査の上で登記情報を修正し、後々の取引や相続での混乱を防ぐ。
  • 弁護士・司法書士に相談すれば、補正対応や紛争対応をスムーズに進めやすい。

登記簿に誤りがあることは珍しくありませんが、発見したら早めに更正登記を行うことで、不動産取引や相続手続きの円滑化を図ることができます。もし不備に気づいた場合は、必要書類を整え、法務局や専門家と連携して迅速に手続きを進めましょう。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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