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相続登記は司法書士?弁護士?トラブルの有無で変わる依頼先の選び方

はじめに

相続が発生し、不動産の名義変更(相続登記)が必要になったとき、多くの人が専門家への依頼を検討します。その際、専門家として「司法書士」と「弁護士」が挙げられますが、「どちらに頼めば良いのか、違いがよく分からない」という声は少なくありません。

司法書士と弁護士は、どちらも法律に関わる専門家ですが、その業務範囲には明確な違いがあります。この違いを理解せずに依頼先を選んでしまうと、手続きがスムーズに進まなかったり、二度手間になってしまったりする可能性があります。

特に、相続人間で「争い」があるかないかは、依頼先を選ぶ上で重要な判断基準となります。

この記事では、これから相続登記を依頼しようとお考えの皆様のために、司法書士と弁護士の役割分担を明確にし、ご自身の状況に合わせて最適な専門家を選ぶためのポイントを、弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。

Q&A

Q1.司法書士と弁護士の、相続手続きにおける最も大きな違いは何ですか?

大きな違いは、「紛争(トラブル)への対応範囲」です。司法書士は、登記申請の専門家であり、書類作成や法務局への申請代理を主な業務とします。一方、弁護士は、依頼者の代理人として、他の相続人と交渉したり、家庭裁判所で遺産分割調停・審判に対応したりすることができます。なお、司法書士にも一定の範囲で代理権が認められる場合がありますが、相続人間の遺産分割紛争の代理は、弁護士に相談すべき領域です。

Q2.相続人同士で揉めておらず、遺産の分け方も全員納得しています。この場合は、どちらに頼むのが良いですか?

そのようなケース、つまり「争いがない」場合には、司法書士に依頼するのが一般的で、費用面でも合理的であることが多いです。相続人全員の合意内容をまとめた遺産分割協議書が既に完成しており、あとは法務局への登記申請手続きだけ、という段階であれば、登記の専門家である司法書士への依頼が適しています。

Q3.遺産の分け方で、兄弟と意見が対立しています。この状態で司法書士に相談に行ったら、どうなりますか?

司法書士は、遺産分割について特定の相続人の代理人となり、他の相続人と交渉することは原則としてできません。そのため、合意が成立していない段階では、まず相続人間で話し合い、遺産分割協議書を作成する必要があります。争いがある、または、ありそうな段階では、交渉や調停の代理が可能な弁護士に相談する必要があります。

解説

相続登記における依頼先選びは、「争いの有無」を中心に判断すると整理しやすくなります。

1.司法書士の役割と得意分野:「手続き」の専門家

司法書士は、「登記・供託」の専門家です。相続においては、主に以下の業務を担当します。

  • 相続登記の申請代理:あなたに代わって、法務局に所有権移転登記を申請します。これは司法書士の中心的な業務です。
  • 必要書類の作成:遺産分割協議書、登記申請書、相続関係説明図など、登記に必要な書類を作成します。
  • 戸籍謄本等の収集:登記に必要な範囲で、戸籍謄本などを収集することも可能です。

【司法書士に依頼すべきケース】

  • 相続人全員の仲が良く、遺産の分割方法について、既に全員の合意が形成されている。
  • 遺言書の内容に従って、粛々と手続きを進めるだけで、異議を唱える相続人はいない。

→ 法的な紛争性がなく、登記完了までの道筋が明確に見えている場合です。

 

2.弁護士の役割と得意分野:「紛争解決」の専門家

弁護士は、法律事務全般を扱うことができ、相続においては、紛争の予防・解決を含めた対応を行います。具体的には、以下のような業務が中心となります。

  • 遺産分割協議の代理交渉:あなたの代理人として、他の相続人と直接、遺産の分割方法について交渉します。
  • 遺産分割調停・審判の代理:家庭裁判所での調停や審判の手続きにおいて、代理人として出廷し、法的な主張・立証活動を行います。
  • 遺留分侵害額請求の交渉・訴訟:不公平な遺言があった場合に、遺留分の請求を代理します。
  • 相続放棄の申述代理:家庭裁判所への相続放棄の手続きを代理します。

【弁護士に依頼すべきケース】

  • 遺産の分け方で相続人間の意見がまとまらない。
  • 他の相続人が提示する分割案に納得できない。
  • 不動産の評価額や、特定の相続人の「寄与分」などで揉めている。
  • 連絡が取れない、または話し合いを拒否する相続人がいる。
  • 遺言書の内容に不満があり、遺留分を請求したい。

→ 当事者間での話し合いが困難で、法的な紛争になっている、または、その可能性が高い場合です。

3.判断基準のまとめ:「争い」の有無が分かれ道

状況 適切な依頼先
争いがない(相続人全員が円満に合意済み) 司法書士(登記申請手続を中心に)
争いがある(遺産分割協議がまとまらない) 弁護士(交渉・調停・審判等の代理)

 4.法律事務所に依頼する「ワンストップ対応」の強み

「最初は揉めていなかったのに、話を進めるうちに対立してしまった」というケースは、相続ではよくあることです。

最初に司法書士に依頼し、途中で紛争が発生した場合、改めて弁護士を探し直し、一から事情を説明しなければならないことがあります。これは、時間的にも費用的にも負担になる場合があります。

その点、最初から弁護士に相談・依頼しておけば、

  • 円満に進めば… 弁護士が遺産分割協議を整理し、必要に応じて提携する司法書士に登記を依頼して手続きを進める。
  • 紛争に発展すれば… 弁護士が交渉・調停の代理人として対応する。

このように、弁護士に相談しておくことで、紛争性の有無に応じて、司法書士との連携を含めた対応方針を検討できます。

まとめ

相続登記の依頼先を選ぶ際の判断基準は、「相続人同士で、遺産の分け方について争いがあるか、ないか」です。

争いがなく、全員が円満に合意しているのであれば、登記手続きの専門家である司法書士が適任です。

しかし、意見の対立がある、あるいは話し合いが難航しそうだと感じるのであれば、交渉の代理が可能な弁護士にご相談ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関する各段階のご相談に対応しています。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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