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不動産相続トラブルを防ぐための生前対策のポイント

はじめに

不動産は、資産として大きな価値を持つ一方、相続が発生した際には複雑な問題を引き起こしやすい特徴があります。実際、「不動産を巡って相続人間でもめてしまった」「予想以上の相続税がかかり、納税資金が足りなくなってしまった」「事前準備をまったくしておらず、遺産分割協議が難航した」といったトラブルは珍しくありません。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、生前のうちにできるだけ早く対策を講じることが大切です。なぜなら、人はいつ判断能力を失ったり、突然の事故や病気に見舞われたりするかわからないため、早めの段階から手を打っておくことで、相続発生時の混乱を回避できるからです。

本稿では、不動産相続において「何も対策をしていなかった場合に起こりうる事態」と、それを避けるための具体的な方法を、順を追って解説します。加えて、弁護士に相談するメリットや、生前に判断能力を失った場合の対策などもあわせてご紹介し、総合的に相続対策を考えるヒントをご説明いたします。

1.不動産相続で起こりうるトラブルとは?

不動産相続において対策が不十分なまま被相続人(亡くなる方)が亡くなってしまうと、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。

相続税が想定以上に高額になる

思っていた以上に相続税がかかり、納税資金が用意できなくなるケースがあります。不動産は評価額が高額になりやすいため、現金や預貯金をそれほど多く残していない場合、納税のために不動産を売却せざるを得なくなることもあるのです。

本来は家族の思い出がつまった土地や、自宅として利用している不動産を手放したくないと思っていても、納税資金を工面するために売却しなければならない事態に陥ることもあります。

遺産分割協議でもめる

不動産が一つしかない場合、相続人全員でその不動産をどのように分けるかは非常に難しい問題になります。実際には「誰が住み続けるのか」「売却して現金で分けるか」「共有名義にするか」など、決定事項が多いため、相続人の思惑が一致しない場合に大きな紛争が起こりやすいのです。

さらに、複数の相続人が同居しているわけではない場合、遠方に住んでいる相続人が「売却して現金でほしい」と主張し、逆に同居していた相続人は「住み続けたいので共有にしたい」と主張するなど、利害関係が衝突すると協議が長期化してしまいます。

遺留分侵害に基づく争い

生前に遺言書を作成していたとしても、その遺言の内容が特定の相続人の遺留分を侵害する内容であれば、後々トラブルになる可能性があります。遺留分とは、法律上、特定の相続人に保証された最低限の取り分を指します。

たとえば「長男にすべての不動産を相続させる」といった遺言があった場合、他の相続人が遺留分を主張し、紛争に発展することがあるのです。

2.まずは現状把握 相続人と財産を調べる重要性

不動産相続対策の第一歩は、現状を正確に把握することです。相続が発生してから慌てて調べるのではなく、生前のうちに「誰が相続人になるのか」「どのような財産があるのか」をきちんと整理しておきましょう。

戸籍や養子縁組の有無を確認する

戸籍謄本や除籍謄本などをたどり、法定相続人が誰になるのかを確定させます。特に、養子縁組の有無がある場合は、相続人の範囲が変わり、相続割合にも影響が及びます。養子の存在を被相続人が周囲に伝えていなかった場合、相続発生後に思わぬトラブルへ発展することがあるため、生前に確認しておくことが大切です。

保有財産の整理と評価

不動産だけでなく、預貯金や株式、保険など、あらゆる財産を一覧にして整理する作業を行いましょう。特に不動産は、固定資産税評価額や相続税評価額を調べて把握することが重要です。

さらに、可能であれば税理士等に依頼し、相続税額の概算シミュレーションを行ってもらうことも有効です。こうすることで、大まかにどれくらいの相続税が課されるかを事前に知ることができ、納税に向けた資金計画を立てやすくなります。

3.具体的な対策例①:生前贈与と売却

現状を把握したうえで行う対策として、まず考えられるのが生前贈与や売却です。これらの方法を適切に用いることで、相続税対策や紛争の予防に大きく寄与します。

生前贈与のメリット・デメリット

生前贈与で不動産をあらかじめ渡しておくことで、「相続開始時にその不動産が相続財産に含まれない」という効果が得られます。贈与税は相続税に比べて税率が高い場合がありますが、以下のような税務上の特例を活用することで、実質的な負担を軽減できることがあります。

  • 配偶者控除
  • 歴年贈与の基礎控除
  • 相続時精算課税制度
  • 孫への教育資金贈与

ただし、これらの特例を利用するにはさまざまな要件を満たす必要があるため、専門家に相談しながら進めることが望ましいといえます。さらに、生前贈与のタイミングや贈与の仕方を間違えると、結局は相続時に「特別受益」として取り扱われ、トラブルの原因になるケースもあるので注意が必要です。

売却による対策

継がせたい不動産が特定の相続人ではなく、むしろ現金化して各相続人へ分配することを希望する場合や、高額な納税資金を確保したい場合には、生前に売却しておくという選択肢もあります。
生前に売却しておくことで、以下のようなメリットを得られます。

  • 納税資金の確保
    売却益を納税資金として蓄えておくことができる
  • 紛争の回避
    相続人が複数いる場合、不動産をどう分けるかでもめずに済む
  • 評価額への影響
    不動産を売却し、預金や現金として保有すれば、後々の相続評価額が予測しやすくなる

ただし、生前に不動産を売却する場合は売却先を見つけるまでに時間を要することもあります。不動産の市況に左右され、売りたいタイミングで思うような価格で売れない可能性もあるため、十分に検討を重ねることが大切です。

4.具体的な対策例②:遺言書の作成

次に、不動産相続対策として非常に有効なのが遺言書の作成です。遺言書があれば、相続人間での「誰がどの財産を相続するのか」という基本方針が明確になるため、大きな争いを防ぐことが期待できます。

公正証書遺言のすすめ

遺言書を作成する際は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」といった形式がありますが、最も安全性が高く確実なのが公正証書遺言です。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成するため、紛失や改ざんのリスクが低く、遺言の有効性を争われるリスクも比較的小さいといえます。

また、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、相続発生後に「遺言書が見つからない」「どこに保管しているかわからない」といったトラブルを防止できるのも利点です。

遺留分への配慮

遺言を作成するうえで注意すべき点のひとつが「遺留分」です。遺留分とは、法定相続人(子や配偶者など特定の範囲)に一定の割合で保障された取り分を指します。遺留分を侵害する内容の遺言は、後から遺留分を主張されるリスクがあるため、あらかじめ遺留分を考慮した配分にしておくか、場合によっては相続人に遺留分の生前放棄をしてもらうなどの対策を講じることもあります。

5.相続税を抑えるための財産組み替え

不動産相続では、相続税の負担をいかに軽減するかが大きな課題となります。そのために活用される手段の一つが、財産の組み替えです。

預貯金を不動産に変える

預貯金は、そのまま相続にまわすと「現金」として相続税評価額が額面通りに算定されます。一方で、不動産は利用状況や立地によって評価額が変わり、場合によっては現金よりも評価が下がることがあります。そこで、生前に預貯金を不動産へ組み替えることで、相続税評価を下げる効果が期待できます。

ただし、購入した不動産の将来的な需要や売却のしやすさ、固定資産税などの維持費、購入費用にかかる税金など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。

賃貸用不動産としての活用

相続税は、賃貸用不動産として第三者に貸し出している場合、一定の評価減が認められることがあります。一般的に「自用地」として保有している土地よりも、貸家や貸アパートとして利用しているほうが相続税評価が下がる仕組みです。

ただし、借り手が見つからないと家賃収入が安定しないリスクもあります。また、不動産の維持管理には手間とコストがかかるため、総合的に判断することが大切です。

6.納税資金を確保するための事前準備

不動産が複数ある場合、納税資金をどう確保するかも大きな課題となります。売却の手続きが思うように進まなかったり、売却価格が予想より下がったりすると、相続税を支払えずに苦境に陥ることもあるからです。

優先順位を決めておく

複数の不動産を保有している場合は、それぞれの不動産の優先度を整理し、「最悪の場合にはどの不動産を売却して納税資金をつくるか」をあらかじめ決めておくとよいでしょう。これにより、相続発生直後にバタバタと売却を急ぐ必要がなくなります。

生命保険の活用

納税資金確保の手段として、被相続人名義の生命保険を活用する方法もあります。受取人を相続人にしておけば、相続発生時に保険金としてまとまった現金が手に入るため、相続税納付の原資になり得ます。生命保険には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、一定の範囲内であれば保険金を受け取っても税金負担が軽減されるメリットもあります。

7.生前に判断能力を失った場合の対策

早期の相続対策が重要な理由のひとつとして、判断能力が低下したり失われたりするリスクがあります。認知症や病気などで判断能力が低下した場合、遺言の作成や財産処分がスムーズに行えなくなるため、事前の対策が不可欠です。

任意後見契約の利用

あらかじめ信頼できる方と「任意後見契約」を結んでおくことで、将来、判断能力が不十分になったときに財産管理や契約行為を任意後見人が代理で行えるように備えておくことができます。

特に、不動産の管理や賃貸借契約の更新などは高度な判断を伴うため、判断能力が低下してからでは難しい場面も多くあります。任意後見契約を利用することで、相続が発生するまでの間でも、不動産を適切に管理してもらえる体制を整えることが可能です。

家族信託の活用

近年注目されているのが、家族信託という財産管理の仕組みです。自分(委託者)が持っている不動産や預貯金などを信頼できる家族(受託者)に信託し、家族に管理・運用してもらいながら、その利益を委託者や指定された受益者に受け取らせる方法です。

家族信託では、認知症などで判断能力が低下したとしても、受託者の管理権限が継続するため、財産の凍結を防ぐことができます。ただし、信託特有の法律知識が必要であり、契約内容によっては相続人間の理解を得るために時間や手間がかかることもあるため、事前によく検討しましょう。

8.弁護士に相談するメリット

不動産相続の対策を検討する際には、税理士や司法書士だけでなく、弁護士に相談することも大きなメリットがあります。以下に代表的なポイントを挙げます。

  1. 総合的なアドバイス
    不動産相続は、税務、登記、紛争リスクなど多面的な要素が絡み合います。弁護士は法的な観点から問題点を整理し、必要に応じて他の専門家(税理士や司法書士など)と連携しながら、総合的なアドバイスが可能です。
  2. 万が一の紛争に備えられる
    相続が始まってから相続人同士でもめてしまった場合、弁護士が間に入ることでスムーズに話し合いを進めることが期待できます。調停や審判に発展した際も、弁護士が代理人として立ち会うことで、依頼者の権利や利益を守りやすくなります。
  3. 複雑な法律問題に対処できる
    遺留分請求や特別受益、寄与分など、相続の際に争点となりやすい法律問題にも、弁護士なら適切に対応できます。あらかじめ法律の専門家に相談しておくことで、紛争を未然に防ぎ、平穏な相続を実現しやすくなります。
  4. 遺言書作成・検認の確実性が上がる
    弁護士が関与することで、遺言書の内容が法律上の要件を満たしているか、遺留分を侵害していないかなどを事前にチェックでき、紛失や改ざんのリスクを下げることができます。

9.まとめ

不動産相続は、多額の資産が動くため、親族間の思わぬ対立を引き起こしやすい領域です。しかし、生前のうちに正確な相続人と財産の把握を行い、贈与や売却、遺言書作成、財産組み替えといった各種対策を適切に組み合わせれば、紛争や過度な税負担を回避する可能性が高まります。

また、相続税や遺留分などの法律面・税務面は複雑な要素が絡み合うため、専門家の助けを借りることが有効です。弁護士に相談することで、相続に関連する法律問題に適切に対処できるだけでなく、紛争予防や紛争対応に備えることも可能になります。

「まだ元気だから相続のことは後回しにしてもいい」と考えがちですが、相続問題はいつ起こるか分からないことから、早めの準備こそが家族全員にとって安心をもたらします。特に、判断能力が不十分になってしまってからでは取れる選択肢も限られてしまいますので、ぜひお早めの対策をご検討ください。

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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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