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不動産評価額と査定の仕組み

はじめに

不動産売買において、まず気になるのは「自分の不動産はいくらで売れるのか」「購入を検討している物件は適正価格なのか」という点ではないでしょうか。そこで重要となるのが、不動産の「評価額」や「査定額」です。価格設定を誤ると、売却側ではなかなか買主が見つからずに売却期間が延びてしまったり、購入側では相場より高い価格で買ってしまう可能性が出てきます。

しかし不動産の評価や査定には複数の方法や基準があり、たとえば「公示地価」「路線価」「固定資産税評価額」など、公的な価格指標だけでもいくつか存在します。また、不動産会社が示す“査定価格”は、必ずしも売却成立価格とイコールではありません。そこで本稿では、不動産の評価額や査定額の仕組みや計算方法、知っておくべきポイントを解説します。不動産の売却や購入を検討している方にとって、根拠のある価格判断をするうえで参考となる情報となれば幸いです。

Q&A

不動産の「公示地価」とは何ですか?

国土交通省が毎年1月1日時点の標準地(全国約2万6,000地点)に対して公表する地価のことで、一般に「公示地価」と呼ばれています。国が公示するため、土地取引の指標として信頼度が高く、売買価格の目安や課税評価の参考に利用されるケースがあります。ただし、実際の不動産売買価格は立地条件や建物の有無、物件の個別事情によって変動するため、公示地価とまったく同じ金額で売買が行われるわけではありません。

「路線価」や「固定資産税評価額」はどう違うのですか?
  • 路線価
    国税庁が発表している相続税や贈与税の算定基準となる価格です。道路(路線)ごとに1平方メートルあたりの価格が示されます。公示地価を100とすると、路線価はだいたい80%程度になることが多いとされています(地域や場所によって異なる)。
  • 固定資産税評価額
    市町村が固定資産税や都市計画税を課税する際に利用する評価額です。公示地価の7割程度とされることが多いですが、地域差が大きいため注意が必要です。
不動産会社が出す「査定価格」はどのように決まるのでしょうか?

不動産会社の査定価格は、公示地価や路線価、成約事例、近隣の売り出し物件の状況など、多角的な情報をもとに総合的に判断されます。加えて、物件の特徴(間取り、築年数、リフォーム履歴など)や需給バランス、売却期限の有無なども考慮され、最終的に「どの価格なら売却できそうか」を導き出します。会社によっては「高めに査定する」「早く売り切るために低めに出す」などの傾向があり、一律には言えません。

複数の不動産会社に査定を依頼すると、価格にバラつきがあるのはなぜですか?

上述の通り、不動産会社が査定する際の方法や重視するポイントが異なるため、出てくる価格に差が出ることは珍しくありません。例えば「早期売却を狙う会社」では相場より低めの価格を提示しがちですし、「売りやすい地域・物件だと判断した会社」では高めの価格を提示する傾向があります。売却希望の方は、必ず複数の会社から査定を取り、根拠をしっかり確認するのがおすすめです。

実際の売買価格は、査定価格通りになるものなのでしょうか?

必ずしも一致しません。査定価格はあくまで「参考値」であり、買主との交渉や市場の動向によって変動します。売り出し価格を高めに設定して反響を見ながら調整する手法や、初めから相場よりやや低めに設定して短期間で売り切る手法など、売主の意向や不動産会社の戦略次第で最終的な成約価格は変わってきます。

解説

専門用語の定義

  1. 公示地価
    毎年1回、国土交通省が公表する土地価格。一定の基準を満たす標準地についての価格が示され、市場の地価動向を把握するための重要資料として扱われます。
  2. 路線価
    国税庁が相続税・贈与税を算定する際の基準価格。道路に面する標準的な土地について1平方メートルあたりの価格が路線ごとに設定されています。
  3. 固定資産税評価額
    市町村が土地や建物に課税する際の基準となる評価額。一般的には公示地価を100とした場合、固定資産税評価額は70前後とされることが多いです。
  4. 査定価格
    不動産会社が売却見込み価格として算出するもので、公的な指標ではありません。成約事例や周辺相場、物件の状態など、会社独自のノウハウを反映させて決定されます。

基本的な流れ・手続き

  1. 査定依頼
    売主が不動産会社へ査定を依頼すると、不動産会社は物件資料(登記簿や公図、建築図面、固定資産税評価通知書など)を確認し、現地調査を行います。
  2. 査定報告
    会社によって「簡易査定」「訪問査定」などの方法がありますが、訪問査定のほうが精度は高いです。複数社から見積もりを取る際は、それぞれ査定価格の根拠をよく確認しましょう。
  3. 媒介契約・売り出し価格の決定
    査定結果を参考に、売り出し価格を設定します。売主が意図的に高めや低めに設定する場合もあり、不動産会社とよく相談しながら決めることが重要です。
  4. 販売活動・調整
    不動産ポータルサイトや広告などを通じて買主募集を行います。反応が少ない場合には値下げを検討するなど、臨機応変な対応が求められます。
  5. 成約と引渡し
    最終的に買主が見つかり、価格交渉を経て合意に至れば売買契約締結・決済・引渡しとなります。

具体的な事例

  • 事例1:査定額が大きく乖離していたケース
    A社は4,000万円、B社は3,500万円という査定結果を提示し、売主は高い方のA社を選択。しかし高値で売り出してもなかなか反響がなく、結局3,600万円へ値下げしたうえでようやく成約。この場合、最初から3,500万円前後で売り出せば、時間と労力を節約できた可能性もあるため、査定根拠の確認が重要です。
  • 事例2:公示地価と実際の売買価格のギャップ
    公示地価をもとに5,000万円程度と見込んでいた土地が、実際には隣地とのトラブルや周辺環境の変化などが懸念され、最終的に4,500万円で成約。このように、個別事情が公示地価や路線価の計算には含まれないため、実際の市場価格とはギャップが生じることがあります。

実務上の注意点

  1. 複数の指標を横断的に見る
    公示地価や路線価、成約事例など、いくつかの価格指標を総合的に判断しましょう。単一の数値だけで価格を決定すると、相場感とのズレが生じやすくなります。
  2. 不動産会社の査定根拠を確認する
    査定金額だけでなく、なぜその金額に至ったのか、どのデータを参考にしているのかをしっかりヒアリングすることが大切です。高い査定を出すだけではなく、具体的な売却戦略を提示してくれる会社を選びましょう。
  3. タイミングや需給バランスも重視
    地域や物件タイプによって売買需要が高まるタイミングがあります(例えば春の転勤シーズンなど)。市場の動向を見極めて価格設定を行うことで、より有利に売買を進めやすくなります。
  4. リフォーム履歴や建物コンディション
    同じエリア・同じ築年数の物件でも、リフォームやメンテナンスの状況によって評価額が異なります。事前に必要な修繕を行っておくと、査定アップにつながるケースもありますが、費用対効果を慎重に検討してください。

弁護士に相談するメリット

  1. 不動産売買トラブルの回避
    相場よりも極端に高い・低い価格を提示されると、売主・買主ともに後々のトラブルに巻き込まれやすくなります。弁護士が客観的な視点で契約書や取引条件を確認することで、不当な取引や詐欺的行為から身を守ることができます。
  2. 価格交渉時の法的サポート
    買主との価格交渉が難航した場合、弁護士が交渉に参加することで、法的根拠に基づく冷静なやり取りを行いやすくなります。
  3. 訴訟などへの対応
    万が一、売買契約成立後にトラブルが発生した際(債務不履行、手付金・違約金の紛争など)にも、弁護士が迅速に対応できる体制を整えておくと安心です。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の強み
    当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は不動産売買や不動産トラブル対応に多数の実績を有しています。評価額や査定の妥当性に疑問を感じた場合や、売買契約書のリーガルチェックが必要な場合は、ぜひご相談ください。

まとめ

不動産評価額や査定価格は、売主・買主双方にとって大変重要な指標となります。しかし、不動産の価格は立地・築年数・市場需給など、さまざまな要素によって変動し、公示地価や路線価、固定資産税評価額など公的な指標と実勢価格に乖離が生じることも珍しくありません。

  • 複数の価格指標を活用し、相場観を養う
  • 不動産会社の査定根拠を確認し、複数社の意見を比較する
  • 個別事情(リフォーム履歴、近隣環境、タイミング)を考慮して最終的な売り出し価格・購入価格を決定する
  • 疑問やリスクがある場合は弁護士など専門家に相談する

大切なのは、明確な根拠に基づいて価格を決定し、円滑かつ納得度の高い売買を実現することです。

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「公示地価と実勢価格の違い」「査定額と成約価格が大きく異なる理由」など、売買実務に役立つ内容をわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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