サブリース契約のリスクと注意点
はじめに
アパート経営やマンション投資を行う上で、「サブリース契約」を活用すると、空室リスクを減らして安定した賃料収入を得やすくなる……そのような広告を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
サブリース(一括借り上げ)とは、賃貸物件を不動産会社が一括して借り上げ、家賃保証を行う仕組みです。一見すると魅力的ですが、実際には保証賃料の改定リスクや契約解除リスクなど、知らないと損をする可能性がある点にも注意が必要です。
本稿では、サブリース契約の基本的な仕組みとリスク、そして契約を締結する際に気を付けておきたい注意点を解説します。サブリース契約は物件オーナーにとってメリットも多い一方で、契約内容によってはトラブルを抱える要因ともなります。正しく理解し、慎重に契約を結ぶことが大切です。
Q&A
サブリース契約とは、具体的にどのような仕組みですか?
サブリース契約では、物件オーナー(貸主)は不動産会社(サブリース会社)と一括借り上げの契約を結びます。サブリース会社が建物を一括で借り受け、第三者(実際の入居者)に転貸する形です。オーナーはサブリース会社から一定の賃料保証を受け取り、空室が出ても安定した収入が期待できる仕組みになっています。
サブリース契約のメリットは何でしょうか?
主なメリットとしては、
- 空室リスクの軽減
実際に入居者がいなくても、オーナーはサブリース会社から賃料を受け取ることができる。 - 管理負担の軽減
入居者募集やクレーム対応をサブリース会社が行うため、オーナーの管理業務が大幅に減る。
では、どのようなリスクがあるのですか?
サブリース契約のリスクには以下のようなものがあります。
- 家賃保証の減額リスク
契約当初は高めの保証賃料を提示していても、数年後に「周辺相場が下がった」などを理由に減額改定を要求されることがある。 - 契約解除リスク
サブリース会社が一方的に契約を解除する権利を契約書に盛り込んでいる場合、オーナーが想定していた収入が突然途絶える恐れがある。 - 修繕費負担の不明確さ
物件の大規模修繕や室内リフォーム費用がどちらの負担か明確でないケースがあり、後から大きな出費が発生することがある。
サブリース契約書ではどこに注目すべきですか?
代表的なチェックポイントは以下の通りです。
- 保証賃料の算定方法・改定方法(何年ごとに、どの基準で改定されるか)
- 契約期間と更新の条件(途中解約可能なのか、違約金はあるか)
- 修繕費用の負担区分(オーナー負担とサブリース会社負担の範囲)
- 免責条項(サブリース会社が支払いを拒否できるケースの有無)
サブリース契約を結ぶときに、事前にできるリスク回避策はありますか?
以下の対策が考えられます。
- 複数社を比較
複数のサブリース会社の条件を比較検討し、相場や条件の妥当性を見極める。 - 契約書のリーガルチェック
- 専門家に契約書を見てもらい、リスクの高い条項がないか確認する。
- 家賃減額可能性の説明を受ける
将来的に賃料が下がる可能性があることを把握し、長期の収支計画を立てる。 - 修繕計画の立案
大規模修繕や設備交換の時期・費用についてもあらかじめ想定しておく。
解説
サブリース契約の仕組み
- 二重構造の賃貸借
サブリース契約は、オーナーとサブリース会社の間の「一括借り上げ契約」と、サブリース会社と入居者の間の「転貸契約」の二つの賃貸借が存在します。オーナーは物件をサブリース会社に貸し、サブリース会社は実際の入居者に転貸するという二重構造です。 - 賃料保証と管理業務
サブリース会社は、オーナーに対して「空室があっても一定の家賃を保証する」ことを約束し、入居者募集・クレーム対応などの管理業務も請け負います。その代わり、サブリース会社は入居者から受け取る賃料との差額(サブリース会社の取り分)でビジネスを成り立たせています。
リスクの具体例
- 保証賃料の減額
当初は「満室想定賃料の9割を保証します」と言っていたのに、契約更新時や数年後に「地域相場が下がったので保証賃料を7割にします」と一方的に提案されるケースがあります。拒否すると契約解除を仄めかされることもあるため、実質的には受け入れざるを得ない場面が少なくありません。 - 修繕負担でのトラブル
サブリース会社が「オーナーに修繕費のすべてを負担してもらう」と主張する場合があり、大規模修繕や設備交換などで多額の出費が必要になることがあります。契約書で費用負担が明確化されていないと、紛争に発展するリスクが高まります。 - 契約解除トラブル
サブリース会社が収益悪化や経営方針の変更などを理由に、契約解除権を行使してくるケースがあります。オーナーが物件を新築した際など、サブリースを前提とした資金計画を組んでいた場合、突然に収入源を失うことでローン返済が困難になるリスクがあります。
サブリース契約の適正化をめぐる動向
- 国土交通省のガイドライン
サブリース契約に関しては、国土交通省から注意喚起やガイドラインが公表されています。特に「30年一括借り上げ」を謳う広告などに対し、家賃減額リスクの説明が十分になされていないとして問題視されています。 - 消費者契約法や宅建業法の観点
サブリース契約において、オーナー(消費者)とサブリース会社(事業者)の立場が著しく不均衡な場合、消費者契約法で条文の無効を主張できる可能性があります。また、不動産会社が宅地建物取引業法上の義務を遵守しているかもチェックが必要です。
実務上の注意点
- 契約期間と解除条項のチェック
契約期間が長期にわたる場合でも、サブリース会社が自由に解除できるとした条項は要注意です。また、更新時や途中解約時の条件、違約金の有無などを細かく確認しましょう。 - 保証賃料の算定根拠を確認
「なぜこの家賃保証額なのか」「周辺相場や将来的な需要などのデータをどのように算出しているのか」を確認し、過度に高い数値を出していないかを検証することが重要です。 - 収支計画の試算
家賃が下がる可能性や、空室が増える場合も想定して、ローン返済や維持管理費を含めた長期的なシミュレーションを行いましょう。甘い見通しで契約すると、数年後に大きな負債を抱えるリスクがあります。
弁護士に相談するメリット
- 契約書のリーガルチェック
サブリース契約書は専門用語も多く、法律知識がないとリスクに気づきにくいことがあります。弁護士が条項をチェックし、オーナーに不利な特約や解除条項がないかなどを指摘できます。 - 不利な契約条件の交渉サポート
サブリース会社との交渉で、家賃減額や修繕費負担の条件を見直したい場合、弁護士が代理として交渉すれば、対等な立場で話を進めやすくなります。 - トラブル・裁判対応
もしサブリース契約が解除された、あるいは賃料減額を受け入れられないなどのトラブルで訴訟に発展する場合にも、弁護士が戦略的に対応策を講じることが可能です。 - 弁護士法人長瀬総合法律事務所の実績
当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)では、不動産投資や賃貸借に関わる様々なご相談を受けており、サブリース契約のトラブルにも豊富な知見があります。初期相談の段階から契約締結・解除交渉・訴訟対応まで、幅広くサポートいたします。
まとめ
サブリース契約は、オーナーにとって空室リスクの回避や管理負担の軽減といった魅力的なメリットがあります。しかし一方で、家賃保証の減額リスクや契約解除リスク、修繕負担トラブルなど、見落とせないリスクも少なくありません。
- 家賃保証が永遠に続くわけではない
- 契約内容をよく読み、解除や減額に関する条項をチェックする
- 複数のサブリース会社を比較検討し、甘い条件には注意
- 必要に応じて弁護士など専門家に相談する
安定収益を期待して契約したはずが、結果的に大きな損失を被らないよう、十分な事前調査と慎重な判断が望ましいといえます。
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