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事業用賃貸借契約のポイント

はじめに

不動産の賃貸借契約は、居住用(住居用)だけでなく、オフィス・店舗・倉庫などの事業用として契約されるケースも多数存在します。事業用賃貸借契約では、住居用とは異なる部分が多く、賃貸借契約書の内容も特有の条項が含まれていることがあります。例えば、用途制限、設備の設置、内装・改装の条件、賃料が消費税の課税対象になることなど、事前に把握しておくべき点が多岐にわたります。

また、事業用物件では高額な保証金や長期の契約期間が設定される場合もあり、契約解除や更新時の条件が居住用に比べて柔軟に取り決められることもあります。本稿では、事業用賃貸借契約の押さえておきたいポイントを中心に解説します。

Q&A

Q1.住居用賃貸借と事業用賃貸借の主な違いは何でしょうか?

住居用は居住のために借りる契約であり、借地借家法のうち住居用保護規定(例えば、正当事由なく貸主から更新拒絶できないなど)が適用されます。一方、事業用の場合はオフィスや店舗等、事業活動を行うための物件であるため、借地借家法上の保護が住居用より弱い(あるいはそもそも適用されない特約が可能)場合もあり、契約自由度が高い面があります。

Q2.事業用賃貸借では、敷金や保証金が高額になることが多いのはなぜですか?

事業用物件では、大規模な改装や設備投資が行われるケースが多く、原状回復費用が高額になりがちだからです。敷金(または保証金)を高めに設定しておくことで、貸主は退去時に原状回復費用や家賃滞納のリスクをカバーしやすくなります。また、事業が失敗した場合の連帯保証人や回収リスクの問題も考慮されるため、高額な保証金が求められる場合が多いのです。

Q3.賃料に消費税がかかる場合があると聞きましたが?

はい、事業用として貸し出す場合、貸主が課税事業者であれば賃料は消費税の課税対象となる可能性があります。住居用賃料は非課税扱いですが、事業用の場合は貸しオフィスや店舗に該当するため、賃料に消費税が上乗せされるのが一般的です。契約時に「賃料○○円(税込)」なのか「○○円(税別)」なのかを明確にしておく必要があります。

Q4.事業用賃貸借契約では、更新がない「定期借家契約」にすることもできるのでしょうか?

もちろん可能です。むしろ、オフィスや店舗では定期借家契約が活用されることが珍しくありません。将来的に建物を建て替えたり、別用途に使う予定がある場合、貸主にとっては期間満了で確実に契約が終了するメリットがあります。ただし、借主との協議のうえで合意する必要があり、説明義務や書面交付などの手続きは居住用の定期借家契約と同様に厳守しなければなりません。

Q5.店舗改装や内装工事を行う場合、どのように契約書に記載するべきでしょうか?

店舗やオフィスの内装工事は借主が行うケースが多いですが、その際の費用負担や工事範囲、退去時の原状回復範囲を明確に取り決めることが重要です。「貸主の事前承諾」「工事後の建物価値の向上による評価」 などを契約書に盛り込み、トラブルを防ぐためにも費用負担や工事の手順をできるだけ詳細に記載しておきましょう。

解説

事業用賃貸借契約の特徴

  1. 契約自由の範囲が広い
    借地借家法による住居用の保護規定は一部適用されない場合があり、契約書で柔軟に取り決められる点が大きな特徴です。たとえば更新料や途中解約の条件など、住居用より自由に設定することができます。
  2. 消費税の扱い
    先述の通り、事業用賃料には消費税が課される場合があります。貸主が課税事業者かどうか、賃料を税込で表示するか税別で表示するかを契約書に明記しましょう。
  3. 保証金・敷金の高額設定
    内装工事や大規模改修のリスク、家賃の高額化などを考慮し、住居用よりも遥かに高い敷金・保証金を求めることが多いです。また、返還時期や返還条件が契約書で個別に定められるのも事業用賃貸借の特徴です。

契約書作成時の注意点

  1. 用途の限定
    物件を「どのような事業目的で使用するのか」を契約で限定しておくと、違法性のある業態や騒音・臭いが著しい業務などに転用されるリスクを下げられます。用途外利用を防ぐ規定を盛り込みましょう。
  2. 内装・設備投資
    借主が店舗やオフィスとして大きく改装する場合、費用負担や造作買取請求権の有無(※)を事前に定めておく必要があります。退去時にこれをめぐって争いになりやすいので、契約書に具体的に明記しましょう。
    (※造作買取請求権:一定の条件下で、借主が設置した設備や内装を貸主に買い取ってもらえる権利)
  3. 競業避止条項
    商業施設などの場合、貸主側が「同じ業態の店舗が近隣に出店しないようにする」などの競業避止条項を設けることがあります。また、借主側が契約期間中に勝手に同業種の店舗を隣に出店することを防ぐためにも、契約書で規定するのが一般的です。
  4. 更新・解約条件
    事業用賃貸借では、定期借家契約を選択するのか、あるいは普通借家契約にするのかをまず検討します。普通借家であっても、解約予告期間や更新条件を住居用より柔軟に設定できる場合が多いです。

具体的なトラブル想定事例

  1. 家賃滞納による事業失敗
    借主が事業不振で家賃を支払えなくなり、保証金から差し引いたが足りない。貸主が契約解除を試みるが、借主が粘って退去せず、結局裁判になり強制執行に至るケース。
  2. 内装工事の負担トラブル
    借主が自費で高級内装を施したのに、退去時に「原状回復義務」としてすべて撤去を要求される。造作買取請求権を行使しようとしたところ、契約書で放棄条項があったため認められず、数百万円の損失が発生した。
  3. 用途変更の問題
    当初はオフィスとして契約していたが、後から飲食店に改装し始め、排煙や騒音で近隣からクレームが殺到。貸主が用途外利用として契約解除を求めた事例。

実務上のポイント

  1. 事前の審査・情報収集
    借主の資金力や事業計画、事業実績などをある程度確認し、長期的に家賃を支払う能力があるかを把握することが重要です。
  2. 明確な契約条項
    住居用よりも高額な資金が動く事業用では、曖昧な規定が大きなトラブルを招きやすいため、契約書を専門家にチェックしてもらうことが推奨されます。
  3. 定期借家契約の活用
    将来の建物活用計画がある貸主や、期間限定で事業を試みたい借主には、定期借家契約のメリットが大きいです。その場合、書面交付や説明義務をしっかり遂行することが必要です。

弁護士に相談するメリット

  1. 契約書作成・審査
    事業用賃貸借契約では高額な敷金・保証金、特有の条項、設備負担など、多面的なリスク管理が求められます。弁護士がリーガルチェックすれば、トラブルの芽を事前に摘むことができます。
  2. トラブル発生時の対応
    家賃滞納、解約・更新、原状回復費用、造作買取請求など、事業用ならではの紛争が起きた際、弁護士が法的根拠に基づいて交渉や裁判手続きを進めることで迅速な解決が期待できます。
  3. 柔軟な交渉と合意形成
    事業用賃貸借では、お互いのビジネスニーズが絡むため、法的視点だけでなくビジネス的視点も含めた交渉が必要です。弁護士が間に入り、双方にメリットがある合意点を探るサポートを行うケースもあります。
  4. 弁護士法人長瀬総合法律事務所の知見
    当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、オフィス・店舗・倉庫など多様な事業用賃貸借契約のサポート実績があり、契約書の作成から訴訟対応まで一貫して行っています。事業用物件に関する法的リスクをしっかりカバーいたします。

まとめ

事業用賃貸借契約は、住居用とは異なるリスクと自由度があります。高額な保証金・敷金、消費税の問題、内装工事の取り扱いなど、多岐にわたる項目を明確にしておくことが不可欠です。

  • 契約自由の幅が広い分、契約書に明確な条項を
  • 敷金・保証金の設定や消費税の扱いに注意
  • 用途・改装・造作など、事業特有の要素を細かく規定
  • 定期借家契約を活用するケースも多い

貸主・借主それぞれのビジネスニーズを踏まえながら、契約書でしっかり合意を形成する ことがトラブル回避のカギとなります。疑問点があれば、弁護士などの専門家に早めに相談するのがおすすめです。

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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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