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登記簿謄本の取り方・見方

はじめに

不動産取引や相続の場面で必ずと言っていいほど登場するのが「登記簿謄本」です。登記簿謄本とは、法務局が管理する不動産の公的記録であり、土地や建物が誰の所有か・どんな権利が設定されているかなどの重要事項が記載されています。

しかし、「そもそも登記簿謄本をどうやって取得すればいいの?」「読み方がわからない」といった疑問を持つ方も多いでしょう。本稿では、登記簿謄本の基本的な取得方法と見方を解説し、実務上の注意点をまとめます。

Q&A

Q1.「登記簿謄本」とは何ですか?

「登記簿謄本」とは、不動産登記簿に記載された情報を写し取ったものです。正確には「登記事項証明書」と呼ばれ、法務局が発行する公的書類です。土地や建物の所在地、地目、地積、所有者、抵当権・賃借権などの権利設定が記載されています。オンライン登記情報提供サービスを利用した「登記情報」も、登記簿謄本に準じた内容です。

Q2.登記簿謄本はどのように取得すればよいのでしょうか?

主に以下の3つの方法があります。

  1. 法務局の窓口で請求
    不動産の所在地を管轄する法務局に行き、「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記載して請求。
  2. 郵送請求
    法務局へ申請書と返信用封筒などを郵送し、登記簿謄本の発行を受ける。
  3. オンライン(登記情報提供サービス)で閲覧
    電子政府のサイト「登記情報提供サービス」を利用し、PDF形式で登記情報を取得する。ただし、こちらは証明書ではなく参考情報扱いとなるため、公的証明書が必要な場合は窓口または郵送で登記事項証明書の取得が必要です。
Q3.登記簿謄本にはどんな情報が書かれていますか?

登記簿謄本(登記事項証明書)は大きく分けて3部構成です。

  • 表題部
    土地の地番、地目、面積など、または建物の構造、床面積、建築年月日など。
  • 甲区(所有者に関する記載)
    現在の所有者(名義人)の名前や住所、所有権移転の原因・日付など。
  • 乙区(抵当権や賃借権に関する記載)
    抵当権、地上権、賃借権などの設定状況、内容、債権金額など。
Q4.「登記情報提供サービス」と「登記事項証明書」は何が違うのですか?

登記情報提供サービスは、インターネットを通じて登記簿の情報を確認する仕組みで、取得した情報はあくまで参考情報となり、公的な証明力はありません。一方、登記事項証明書(登記簿謄本)は、法務局が紙で発行する正式な証明書であり、裁判や契約手続きなどで公的証拠として使用できます。

Q5.登記簿謄本の読み方のポイントはありますか?

主に以下の点に注目すると理解しやすいです。

  • 地番・家屋番号:住居表示とは異なるので混同に注意。
  • 地目・構造:実際の用途や建物構造を確認する。
  • 権利関係(甲区・乙区):所有者、抵当権者、債権金額、設定・移転日付などが時系列で記載される。
  • 抹消や変更履歴:抹消の場合は登記原因や日付が書かれ、“抹消”の表示がある。

解説

登記簿謄本(登記事項証明書)の取得方法詳細

1. 法務局窓口での取得
  • 申請書の記入
    物件の地番、家屋番号、所有者の氏名(わかる範囲)などを記入。
  • 手数料の納付
    1通につき数百円程度の収入印紙を購入し、貼り付ける。法務局によって金額が変わる場合があるので注意。
2. 郵送請求
  • 申請書を法務局のサイトからダウンロードし、記入。
  • 必要な分の登記印紙(収入印紙)を貼り付ける。
  • 返信用封筒(宛先記入・切手貼付)を同封し、法務局に郵送。
  • 数日~1週間程度で返信される。
3. オンラインシステム(登記情報提供サービス)で確認
  • 登記情報提供サービスのサイトにアクセスし、利用者登録。
  • 物件の地番や家屋番号を入力して登記情報を検索。
  • PDFでダウンロードできるが、証明書としての効力はないため、正式には「情報」として扱われる。

登記簿謄本(登記事項証明書)の見方

1. 表題部
  • 土地の場合
    地番、地目、地積が書かれており、変更履歴がある場合は更新日や変更原因も記載。
  • 建物の場合
    家屋番号、構造(木造・鉄筋コンクリートなど)、床面積、建築年月日などが記載。
2. 甲区(所有者に関する情報)
  • 所有権がどのように移転してきたか、履歴が時系列で並ぶ。現在効力を持つのは最新の記載。
  • 登記原因と日付(売買・相続・贈与など)が明確に記載されるため、いつ、どのように所有者が変わったかがわかる。
3. 乙区(担保権・賃借権など)
  • 抵当権
    債権額、債権者、設定日、金利などが書かれている。抹消されていないか確認。
  • 賃借権
    賃貸借契約で登記されている場合、その契約内容の概要が記載されることもある。

実務上の注意点

地番と住所の違い

住居表示と地番は別物であるため、たとえ住所が「〇〇町1-2-3」でも、登記簿上の地番は「〇〇町1番2」などとなっている場合が多い。誤った住所を申請書に書くと情報がヒットしないため注意。

登記完了直後の反映タイミング

登記事項証明書や登記情報提供サービスの内容は、登記が完了してから反映されるまで数日かかることがある。取引直前に取得する場合は日数に余裕を持つべき。

古い抹消履歴

抹消された抵当権などが表示されていることがあるが、最新の登記事項には効力がない。「抹消」と明記されていれば法的効果は消滅している。

弁護士に相談するメリット

登記情報と実態の確認

登記簿謄本(登記事項証明書)の記載内容と実際の取引内容や相続状況などに齟齬がないかを、弁護士が法的視点でチェックすることで、後々のトラブルを防げます。

権利関係の紛争対応

所有者が誰か、抵当権が残っているかなどで紛争が生じる場合、弁護士がスムーズに調査・交渉・訴訟対応を行い、権利関係を正確に確定することを目指します。

相続・売買のサポート

相続登記や売買契約の前提として登記簿謄本を取得し、記載内容が誤っている場合、更正登記の手続きをサポートするなど、包括的な法的アドバイスが可能です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所の強み

当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は、不動産取引や相続問題で発生する登記関連の紛争、契約書のレビュー、名義変更など、多岐にわたる案件を取り扱ってきました。登記簿謄本の情報をもとに最適な解決策を提案できる体制を整えています。

まとめ

登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産の所在・面積・所有者や担保設定などを公示する重要書類。
  • 取得方法
    法務局窓口での請求、郵送請求、オンラインシステム(登記情報提供サービス)の3種類。公的証明力が必要なら「登記事項証明書」を取得する。
  • 見方のポイント
    表題部(物理的情報)、甲区(所有権)、乙区(抵当権など)をそれぞれ確認し、最新の記載を把握する。
  • 注意点
    地番と住居表示の違い、抹消された権利の有無、登記完了までの反映タイムラグ。
  • 弁護士・司法書士の活用
    登記事項の確認や更正手続き、紛争対応などを専門家が支援すると安全かつスムーズ。
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登記簿謄本は、不動産にまつわる取引・手続きにおける「公的な地図」とも言えます。正しく取得し、記載内容を理解することで、不動産の所有状況や権利関係を把握し、安心して取引や相続を進められるようにしましょう。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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