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欠陥住宅かも?と思ったら。泣き寝入りしないために最初にすべきことと相談先の選び方

はじめに

「新築の家に引っ越してすぐ、雨漏りが始まった」
「床にビー玉を置くと、勝手に転がっていく」
「基礎のコンクリートに、素人目にもわかる大きな亀裂が入っている」

人生最大の買い物であるマイホーム。その夢の我が家に「欠陥」の疑いが生じたとき、オーナー様が抱くショックと憤りは計り知れません。「まさか自分が欠陥住宅をつかまされるなんて」という動揺の中で、何をどうすれば良いのか、冷静に判断することは非常に困難です。

しかし、欠陥住宅(契約不適合)のトラブルにおいて、初期対応の遅れや誤った判断は致命的です。

施工会社の「よくあることですよ」という言葉を鵜呑みにして保証期間を過ぎてしまったり、証拠を残さずに補修させて原因がうやむやになったりと、初期段階でのミスが後の損害賠償請求を困難にするケースが後を絶ちません。

2020年の民法改正により、売主の責任は従来の「瑕疵(かし)担保責任」から「契約不適合責任」へと変わり、買主の権利保護が強化されました。しかし、権利を行使するためには、正しい手順を踏む必要があります。

本記事では、欠陥住宅の疑いを持った際にまずとるべき行動、絶対にやってはいけないNG行動、そして解決に向けた相談先の選び方を解説します。

欠陥住宅トラブルに関するQ&A

Q1. 施工会社に不具合を伝えたら「木造ならよくある木の収縮です」と言われました。信じていいのでしょうか?

安易に鵜呑みにしてはいけません。

確かに木造住宅では、木材の乾燥収縮により多少のクロス切れや床鳴りが発生することはあります。しかし、それが「許容範囲内の現象」なのか、構造に関わる「重大な欠陥」の予兆なのかを判断できるのは、利害関係のない第三者の専門家(建築士など)だけです。

施工会社は、責任追及を避けるために問題を過小評価したり、「様子を見ましょう」と時間を稼いだりする傾向があります。納得できない説明の場合は、必ずセカンドオピニオンを求めてください。

Q2. 欠陥を見つけた場合、いつまでに何をすればいいですか?時効はありますか?

民法上のルールと、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)のルールを押さえておく必要があります。

  1. 民法(契約不適合責任): 不具合(契約不適合)を知った時から1年以内に、売主にその内容を「通知」しなければなりません。この通知を怠ると、権利を失います。
  2. 品確法(新築住宅): 「構造耐力上主要な部分(柱、基礎など)」と「雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁など)」については、引き渡しから10年間の保証(瑕疵担保責任)が義務付けられています。

まずは1年以内に「通知」の証拠を残すことが最優先です。

Q3. すでに住んでいますが、契約を解除して代金を全額返してもらうことはできますか?

契約解除は、欠陥が非常に重大で、「契約をした目的を達成できない」場合にのみ認められる、最も強力かつハードルの高い解決手段です。

単に雨漏りがあるというだけでは、通常は「修補(修理)」や「損害賠償(修理費の支払い)」での解決となります。しかし、建て替えが必要なほど基礎が傾いているなど、居住自体が危険で修復も困難な場合には、契約解除が認められる可能性があります。これには高度な法的判断と立証が必要です。

解説:欠陥住宅疑惑、発見から解決までの初期対応フロー

欠陥住宅のトラブル解決は、「証拠の保全」と「専門家との連携」がポイントです。感情的に施工会社を怒鳴りつけても解決しません。以下のステップで冷静に対応しましょう。

ステップ1:証拠の保全と記録(自分で行うこと)

施工会社に連絡する前に、まずは現状をご自身で記録します。「いつの時点でどうなっていたか」の記録は、後で改ざんできない強力な証拠になります。

詳細な写真・動画撮影

  1. 欠陥箇所(ひび割れ、雨染み、カビなど)を、まずは遠目から位置がわかるように撮影し、次にアップで撮影します。
  2. ひび割れには定規やメジャーを当てて、幅や長さが写真だけでわかるようにします。
  3. 動画を使って、床の傾き(ボールが転がる様子)や、異音(床鳴り)を記録するのも有効です。

時系列メモ(日記)の作成:

  • 「いつ気付いたか」「いつ被害が拡大したか」を時系列で記録します。
  • 施工会社とのやり取りは、日時、担当者名、発言内容を詳細にメモします。
  •  

ステップ2:施工会社・売主への連絡(第一報)

記録をとったら、施工会社(または売主)に連絡し、現地確認を求めます。

重要ポイント

会話は録音する

現場に来た担当者が「ああ、これは施工ミスですね」「図面と違いますね」とポロっと認めることがあります。この発言は、後で裁判になった際に重要な証拠となります。

その場での補修を許可しない

原因が特定される前に、とりあえずコーキング材(充填剤)で埋めるなどの応急処置をさせてはいけません。原因が隠蔽され、根本的な解決ができなくなる恐れがあります。「調査が終わるまでは触らないでください」と伝えてください。

ステップ3:第三者機関(建築士・ホームインスペクター)への調査依頼

施工会社の説明に納得がいかない場合、あるいは「直します」と言いながら対応が遅い場合は、外部の専門家を入れます。

ホームインスペクション(住宅診断)

  • 利害関係のない建築士(ホームインスペクター)に依頼し、建物を専門的な機材で調査してもらいます。
  • 費用は数万円〜数十万円かかりますが、詳細な「調査報告書」を作成してもらうことが目的です。
  • この報告書が、欠陥の存在を客観的に証明する「武器」となります。

ステップ4:弁護士への相談・通知書の送付

調査報告書で「施工不良(契約不適合)」の可能性が高いと判断されたら、弁護士に相談します。

弁護士の動き
  • 調査結果に基づき、法的にどのような請求(補修、減額、賠償、解除)が可能か検討します。
  • 弁護士名で内容証明郵便を送付し、売主に対して正式に契約不適合責任を追及する旨の「通知」を行います(時効の完成を阻止します)。
  • 任意の交渉でまとまらなければ、調停や訴訟(建築裁判)の手続きへ移行します。

相談先の選び方:誰に何を相談すべきか

「欠陥住宅」は、「建築技術」と「法律」の両方の専門知識が必要な複合的なトラブルです。それぞれの役割を理解し、適切なタイミングで相談することが解決への近道です。

住まいるダイヤル(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)

特徴

国土交通大臣指定の相談窓口です。建築士や弁護士が電話で相談に乗ってくれます(1時間まで無料の場合あり)。

できること

トラブルの整理、一般的な対処法のアドバイス、近くの専門家紹介。

おすすめ

まずどこに相談していいかわからない時の「最初の入り口」として。

建築士・ホームインスペクター(技術の専門家)

特徴

建物の構造や施工状況を診断するプロフェッショナルです。

できること

  • 不具合の原因究明(なぜ雨漏りしているのか)。
  • 補修方法の提案と、適正な補修費用の見積もり。
  • 裁判でも通用する「調査報告書」の作成。

できないこと

相手方との法的な交渉、損害賠償請求の代理。

注意点

「一級建築士」なら誰でも良いわけではありません。「設計」が得意な人と「検査・調査」が得意な人は別です。欠陥調査の実績が豊富な建築士を選びましょう。

弁護士(法律・交渉の専門家)

特徴

あなたの代理人として、売主と戦う法律のプロフェッショナルです。

できること

  • 代理人交渉: あなたに代わって売主と交渉します。
  • 法的構成: 建築士の調査結果を、法的な「主張」に組み立て直します。
  • 手続き: 内容証明郵便の作成、調停、建築訴訟の遂行。

できないこと

建物の技術的な調査・鑑定(これは建築士と連携して行います)。

おすすめ

  • 施工会社が責任を認めない場合。
  • 損害額が大きく、しっかり賠償を請求したい場合。
  • 契約解除を視野に入れている場合。

弁護士に相談するメリット

欠陥住宅トラブルにおいて、弁護士に依頼するメリットは「交渉力の格差是正」にあります。

相手は「建築とクレーム対応のプロ」である

相手方(ハウスメーカーや工務店)は、建築知識が豊富なだけでなく、クレーム対応にも慣れています。素人が「ここがおかしい」と言っても、「建築基準法では問題ない」「経年劣化だ」と専門用語でまくし立てられれば、反論するのは困難です。

弁護士は、協力関係にある建築士の知見を借りつつ、法的な論理で相手の言い逃れを封じます。

「契約不適合責任」を活用する

2020年の民法改正で導入された「契約不適合責任」は、買主に以下の4つの権利を認めています。

  1. 追完請求権(直してくれ)
  2. 代金減額請求権(直せないなら安くしてくれ)
  3. 損害賠償請求権(損をした分のお金を払ってくれ)
  4. 契約解除権(契約を白紙に戻す)

弁護士は、状況に応じてこれらの権利を組み合わせ、依頼者にとって経済的利益が大きくなる解決策を提案します。例えば、信頼できない業者に無理に直させる(追完請求)よりも、代金減額や損害賠償でお金をもらい、信頼できる別の業者に直してもらう方が良いケースもあります。

時効や期間制限の管理

前述の通り、「知ってから1年以内の通知」や「引き渡しから10年」といった期間制限があります。これを過ぎると、勝てるはずの裁判も負けてしまいます。弁護士はこれらの期限を管理し、適切なタイミングで時効を中断(更新・猶予)させる措置をとります。

まとめ

念願のマイホームに欠陥が見つかることは、精神的にも金銭的にも大きな苦痛です。しかし、泣き寝入りをする必要はありません。法律はあなたを守る仕組みを用意しています。

重要なのは、「自分だけで解決しようとしないこと」です。

  1. 不具合を見つけたら、記録をとる。
  2. 施工会社の言い分を鵜呑みにせず、第三者(建築士)の目を借りる。
  3. 解決が難航しそうなら、早めに弁護士に法的交渉を任せる。

このチームプレーこそが、欠陥住宅トラブルを解決する道です。

まずは「これって欠陥?」という疑問からで構いません。お早めにご相談ください。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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