ご遺族の生活を守る遺族(補償)給付(年金・一時金)の受給要件と順位
はじめに
労働災害によって、かけがえのない大切なご家族を、あまりにも突然に失われたご遺族の皆様に、心からお悔やみを申し上げます。
今は、深い悲しみと喪失感の中で、ただ時間だけが過ぎていくように感じていらっしゃることでしょう。そして、その悲しみに追い打ちをかけるように、大黒柱を失ったご家庭の「これからの生活」に対する、重く、現実的な不安がのしかかっているかもしれません。
労災保険制度には、そのような、残されたご遺族の将来の生活を支えるため、そして、亡くなられた方の想いに応えるための、大切な給付制度が設けられています。それが「遺族(補償)給付」です。
この記事では、悲しみの淵におられるご遺族の方々のために、この「遺族(補償)給付」について、どのような条件で、どなたが受け取ることができるのか、その仕組みを解説します。
遺族(補償)給付とは?
残された家族の生活保障
遺族(補償)給付とは、労働者が業務上の事由または通勤によって死亡した場合に、その方の収入によって生計を支えられていたご遺族に対し、その後の生活を保障することを目的として支給されるものです。
この給付には、継続的に支払われる「遺族(補償)年金」と、一時的にまとめて支払われる「遺族(補償)一時金」の2種類があり、ご遺族の状況によって、どちらかが支給されることになります。
誰が受け取れる?「受給資格者」の範囲と優先順位
この給付は、ご遺族であれば誰でも受け取れるわけではありません。法律によって、給付を受け取ることができる人の範囲(=受給資格者)と、その優先順位が定められています。
遺族(補償)年金の受給資格者と順位
遺族(補償)等年金は、お亡くなりになった方の収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹のうち最先順位者が受け取れますが、妻以外の遺族については、労働者の死亡の当時に一定の高齢又は年少であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが必要です。
遺族(補償)等一時金は、年金を受け取る方がいらっしゃらない場合に、配偶者、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母、その他の子・父母・孫・祖父母、兄弟姉妹のうち最先順位者に、お支払いできます。
【重要なポイント】
生計維持関係
受給資格者となるためには、亡くなられた労働者の収入によって「生計を維持されていた」ことが必要です。同居していた場合はもちろん、別居していても仕送りを受けていた場合や、共働きで家計を一つにしていた場合なども、広く認められます。
最先順位者のみが受給
この順位は絶対です。例えば、第1順位である妻がいる場合、たとえ生計を維持されていたとしても、第2順位以降である父母や兄弟姉M妹は、年金を受け取ることはできません。
「年金」と「一時金」、どちらが受けられる?
① 遺族(補償)年金が支給される場合
亡くなられた時点で、上記の受給資格者が一人でもいる場合には、遺族(補償)年金が支給されます。支給額は、ご遺族の人数によって異なり、給付基礎日額の153日分~245日分が、原則として権利が続く限り、毎年支給されます。
② 遺族(補償)一時金が支給される場合
これは、年金を受け取れるご遺族がいない場合に支給されるものです。
- ケースA:亡くなられた時点で、年金の受給資格者が一人もいない場合。
- ケースB:年金を受け取っていた方が、再婚などで権利を失い(失権)、他に年金を受け取れる順位の方がいない場合。かつ、それまでに支払われた年金の合計額が一定額に満たないとき。(その差額が支給されます)
- 支給額は、原則として給付基礎日額の1,000日分が、一時金として一度に支払われます。
- 一時金を受け取れる遺族の順位は、年金とは少し異なります。(①配偶者、②生計を維持されていた子・父母・孫・祖父母、③その他の子・父母・孫・祖父母、④兄弟姉M妹)
忘れてはならない、その他の給付
遺族(補償)給付に加え、ご遺族には以下の給付も併せて支給されます。
- 遺族特別支給金:年金・一時金のどちらが支給されるかに関わらず、ご遺族に対して一律300万円が一時金として支給されます。
- 遺族特別年金・一時金:亡くなられた方のボーナスなど(算定基礎年額)を基礎として計算される、年金または一時金が上乗せで支給されます。
- 葬祭料(葬祭給付):葬儀を行った方に対して、その費用を補うために、一定額が支給されます。
まとめ
残されたご家族の未来のために
かけがえのないご家族を失った悲しみは、決して癒えるものではありません。しかし、遺族(補償)給付は、亡くなられた方が、その命と引き換えにご家族に残してくれた、未来への生活保障です。その想いを無にしないためにも、正しく制度を理解し、請求することが大切です。
受給資格者の判断や、生計維持関係の証明、そして数多くの書類の準備と請求手続きは、ご遺族が深い悲しみの中で、ご自身たちだけで行うには、あまりにも大きなご負担となります。
会社とのやり取りや、手続きの進め方に少しでも不安を感じられたら、どうか一人で抱え込まず、私たち弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
あなた方に代わって、故人の尊厳と、残されたご家族の権利を守るため、私たちが手続きを遂行いたします。
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