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TOP 新着情報 定期借家契約のメリット・デメリットと普通借家契約との違い~更新のない契約で実現するリスク管理~

定期借家契約のメリット・デメリットと普通借家契約との違い~更新のない契約で実現するリスク管理~

はじめに

賃貸経営において、オーナー様が最も恐れるリスクの一つが「一度貸したら、なかなか返してもらえない」という点ではないでしょうか。

日本の借地借家法は、歴史的経緯から借主(入居者)の保護を重視しており、一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、契約期間が満了しても、貸主側に「正当事由」がない限り更新を拒絶することができません。そのため、建物の老朽化による建て替えや、入居者とのトラブルがあっても、スムーズに退去してもらうことが難しく、多額の立退料が発生するケースも珍しくありません。

こうした貸主側のリスクを解消するために、2000年(平成12年)の法改正で導入されたのが「定期借家契約(定期建物賃貸借契約)」です。

この制度の最大の特徴は、「契約期間の満了により、更新されることなく確定的に契約が終了する」という点にあります。

導入から20年以上が経過しましたが、未だに「手続きが面倒そう」「入居者が集まらないのではないか」といった懸念から、普通借家契約のみを利用されているオーナー様も少なくありません。しかし、定期借家契約の仕組みを正しく理解し活用することで、将来のトラブルを予防し、計画的な資産運用が可能になります。

本記事では、定期借家契約と普通借家契約の決定的な違い、貸主にとってのメリット・デメリット、そして導入時に守らなければならない手続きについて解説します。

Q&A:定期借家契約に関するよくある疑問

まずは、定期借家契約の導入を検討されている貸主様からよくいただく疑問について、Q&A形式で解説します。

Q1. 定期借家契約なら、期間が終われば確実に退去してもらえますか?

はい、更新がないため原則として期間満了で契約は終了します。

普通借家契約とは異なり、借主がどれほど住み続けたいと希望しても、契約期間が満了すれば借家権は消滅します。貸主が更新を拒絶するための「正当事由(自己使用の必要性や立退料の提供など)」も不要です。ただし、期間満了で終了させるためには、契約前の説明義務を果たしていることや、期間満了の通知(期間が1年以上の場合)を適切に行う等の要件を満たす必要があります。

Q2. 現在、普通借家契約で入居中の人を、次回の更新から定期借家契約に切り替えられますか?

ハードルが高く、法律上できない場合もあります。

まず、普通借家契約から定期借家契約への切り替えは、借主にとって既得権(更新できる権利)を失う大きな不利益変更となるため、借主の明確な合意がなければ不可能です。一方的に切り替えることはできません。

さらに、2000年(平成12年)3月1日より前に締結された居住用建物の賃貸借契約については、たとえ当事者間で合意があったとしても、定期借家契約への切り替え(または合意解約後の新規契約)は法律で認められていません(借地借家法附則)。

Q3. 「良い入居者」であれば、期間満了後も住み続けてほしいのですが可能ですか?

「再契約」という形で住み続けてもらうことが可能です。

定期借家契約には「更新」という概念はありませんが、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了の翌日から始まる新しい契約(再契約)を結ぶことができます。これを前提とした「再契約型定期借家契約」として運用することで、優良な入居者には長く住んでもらい、マナーの悪い入居者には期間満了で退去してもらうという選別が可能になります。

解説:定期借家契約の仕組みとメリット・デメリット

ここからは、定期借家契約の特徴を普通借家契約と比較しながら、法的な観点から解説します。

1. 普通借家契約と定期借家契約の違い

両者の最大の違いは、「契約の更新」に対する考え方です。

項目 普通借家契約 定期借家契約
契約の更新 あり(原則として更新される) なし(期間満了で終了)
貸主からの解約・更新拒絶 「正当事由」が必要 「正当事由」は不要
契約期間 1年以上(1年未満は期間の定めなしとみなされる) 制限なし(数ヶ月でも可)
契約方法 書面でなくても成立するが書面が一般的 公正証書等の書面が必須
中途解約 特約があれば可(なければ原則不可だが慣習で可の場合多し) 原則不可(特約または床面積200㎡未満の居住用でやむを得ない事由がある場合のみ可)
賃料増減額請求 特約があっても減額請求は排除できない 特約で改定を制限(固定)することが可能

普通借家契約では「法定更新」という制度があり、契約期間が終わっても、貸主が正当事由をもって異議を述べない限り、自動的に契約が更新されたものとみなされます。これに対し、定期借家契約は「期間の経過」のみをもって確定的に契約が終了します。

2. 貸主にとっての3つのメリット

定期借家契約を導入することで、貸主には以下のようなメリットがあります。

① 立退料リスクの解消と確実な返還

普通借家契約で借主に退去してもらうには、老朽化などの理由があっても、数百万円規模の「立退料」が必要になるケースが多々あります。定期借家契約であれば、期間満了で権利が消滅するため、立退料を支払うことなく物件の返還を受けることができます。将来の建て替え計画がある場合や、転勤の間だけ自宅を貸したい場合に最適です。

② 「不良入居者」リスクの回避

賃貸経営における大きなストレス源である、騒音トラブルやゴミ出しルール違反を繰り返す入居者への対応。普通借家契約では、信頼関係が破壊されたと法的に認められるまでのハードルが高く、簡単には解約できません。

定期借家契約(再契約型)であれば、契約期間中にトラブルが多かった入居者とは「再契約しない」という判断を下すだけで、期間満了とともに適法に関係を終了させることができます。これは他の優良な入居者を守ることにもつながります。

③ 賃料改定ルールの自由度が高い

普通借家契約では、借主からの「家賃を下げてほしい」という請求(賃料減額請求権)を特約で排除することはできません。しかし定期借家契約では、「契約期間中は賃料を増額も減額もしない」といった特約を有効に定めることができます(借地借家法38条9項)。これにより、長期的に安定した収益計画を立てることが可能になります。

3. デメリットと注意点

一方で、導入にあたっては以下のデメリットも考慮する必要があります。

① 賃料相場がやや低くなる傾向

借主にとって「更新権がない」ということは、いつか必ず退去しなければならない(または再契約できるかわからない)という不安定さを意味します。そのため、普通借家契約に比べて賃料を多少安く設定しないと、入居者が集まりにくい傾向があります。ただし、「再契約型」であることを明示し、長く住める安心感をアピールすることで、このデメリットを軽減することは可能です。

② 中途解約の制限

定期借家契約は、原則として期間中の解約ができません。これは貸主だけでなく借主も拘束します。

ただし、床面積200㎡未満の居住用建物については、借主に転勤、療養、親族の介護などの「やむを得ない事情」が発生した場合、借主からの中途解約が可能であると法律で定められています(借地借家法38条7項)。この規定は強行法規であり、特約で排除することはできません。

一方、貸主からの中途解約は原則としてできません(債務不履行解除を除く)。

4. 厳格な手続き要件:これを怠ると「普通借家」になる

定期借家契約で注意すべき点は、契約締結の手続きが厳格であるということです。以下の要件を一つでも欠くと、法的に「定期借家契約」とは認められず、「普通借家契約」として扱われてしまいます。

要件1:公正証書等の書面による契約(借地借家法38条1項)

法律上、「公正証書による等書面によって」契約しなければならないとされています。「公正証書」が確実ですが、必須ではなく、通常の契約書でも構いません。しかし、口頭での合意は無効ですし、契約書上で「定期借家」と明記されている必要があります。

要件2:事前の書面交付と説明(借地借家法38条2項)

この点もトラブルになりやすいポイントです。

貸主は、契約締結の前に、借主に対して「この契約は更新がなく、期間の満了により終了する」旨を記載した書面(契約書とは別の書面)を交付して、説明しなければなりません。

「契約書の中に書いてあるからいいだろう」は通用しません。契約書とは独立した「事前説明書」を用意し、借主から「説明を受け、理解しました」という署名・捺印をもらっておく必要があります。

要件3:期間満了の通知(借地借家法38条6項)

契約期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間(通知期間)に、借主に対して「期間が満了するので契約が終了します」という通知をしなければなりません。

この通知を忘れて期間満了日を過ぎてしまうと、借主に対して契約終了を主張できなくなります(ただし、通知をしてから6ヶ月経過すれば終了を主張できるようになります)。

弁護士に相談するメリット

定期借家契約は強力なツールですが、その分、手続きのミスが許されない制度です。弁護士に相談することで、以下のようなサポートを受けることができます。

1. 法的に有効な契約書・事前説明書の作成

定期借家契約が「普通借家契約」とみなされてしまう失敗の多くは、書面の不備や説明不足によるものです。弁護士は、最新の法令や判例に基づき、不備のない契約書や事前説明書を作成します。特に「再契約型」とする場合の特約条項などは、後のトラブルを防ぐために慎重な記載が必要です。

2. 個別事情に応じた導入アドバイス

「この物件は定期借家にするべきか、普通借家の方がいいか」という経営判断についても、法的なリスクとメリットを整理してアドバイスします。また、既存の入居者との契約切り替えが可能かどうかについても、過去の契約経緯を踏まえて適法性を判断します。

3. 終了時・再契約時のトラブル対応

期間満了時に借主が居座ってしまった場合の明渡し手続きや、再契約を拒否した際のトラブル対応などをサポートします。また、期間満了通知の期限管理(タイムリミット)についても、顧問契約などを通じてサポートすることが可能です。

まとめ

定期借家契約は、貸主が物件のコントロール権を取り戻すための非常に有効な契約形態です。

  • 更新がない: 期間満了で確実に契約が終了する。
  • 正当事由不要: 立ち退き料や理由の正当性を争う必要がない。
  • 厳格な手続き: 事前の書面説明や終了通知を怠ると、普通借家契約になってしまう。

特に、「将来自分たちで使うかもしれない」「建て替えを検討している」「入居者トラブルを未然に防ぎたい」というオーナー様にとって、定期借家契約のメリットは計り知れません。

しかし、その運用には専門的な知識と厳格な管理が求められます。

定期借家契約の導入を検討されている方、あるいは現在の契約内容に不安をお持ちの方は、ぜひ一度、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。不動産法務を扱う弁護士として、貴社の賃貸経営をリスクから守る最適なプランをご提案いたします。


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この記事を書いた人

⻑瀬 佑志

⻑瀬 佑志

弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。約150社の企業と顧問契約を締結し、労務管理、債権管理、情報管理、会社管理等、企業法務案件を扱っている。著書『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)、『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)ほか。

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